美術、写真、そして建築の評論家として活動し、今なお、多くの建築家・写真家に影響を与える多木浩二。近年、再び評価が高まっているが、今回発表されるのは多木の初となる写真集だ。「ことば」ではなく「まなざし」から、その思考が浮き彫りとなる。
多木浩二は1970年までは写真家だった。自らが発行人となり、中平卓馬や森山大道と同人誌『Provoke』を発表するなど積極的に活動していたが、70年以降は批評家としての仕事に専念していく。今回の写真集に収録されているのは、そんな写真家から評論家へと移行する1968年から1979年にかけて撮影された、個人住宅17軒、125の写真だ。被写体となった建築を設計したのは、篠原一男、坂本一成、伊東豊雄、白澤宏規。それぞれの建築家が、多木から生前に預かっていたフィルムやプリントをこの度、公開した。特に篠原一男の作品を写した写真の大半は未発表だったというが、その理由には多木が自身の写真行為を放棄していたこと、また篠原自身が世に出る作品写真を制御していたことがあげられる。多木の没後9年を経て発表される今作にはどのような狙いがあるのか。
親族である多木陽介は「あの写真をことさらまとめて外に出すことを父が喜ぶとは思いません」と語りつつも、その意義を大きく捉えている。緊張感のある構図。記録に徹しているとは言い難い、アレ・ブレ・ボケのある視点。コントラストの高いプリント。そこには確かに写真家・多木浩二が存在し、同時に評論家・多木浩二の厳しいまなざしがある。
篠原一男の《未完の家》(1970)や《篠さんの家》(1970)、坂本一成の《代田の町家》(1976)、伊東豊雄の《中野本町の家(White U)》(1976)など、伝説の住宅を多木のフィルターを通して眺められることも喜びだ。写真集としての発表ではあるが、図面や撮影地をプロットした資料も掲載。多木が篠山紀信写真集『家 meaning of the house』(潮出版、1975)に寄せた19編のエッセイのひとつ「家のことば」などテキストも充実している。
7月14日から〈森岡書店 銀座店〉で開催される出版記念展では、貴重なプリントも展示。この機会にぜひ、多木浩二の多面的な活動を見直したい。
『建築のことばを探す 多木浩二の建築写真』
故・多木浩二(1928-2011)が1968年から1979年に撮影した個人住宅17軒、125の写真を収録。文化人類学者・今福龍太の書き下ろし「家々は海深く消え去りぬ 多木浩二の『反-建築写真』」も掲載する。2020年7月14日先行発売開始。コデックス装、256ページ。6000円(発行元:建築の建築)。7月14日〜19日は〈森岡書店 銀座店〉にて出版記念展を開催。
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July 14, 2020 at 05:15PM
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多木浩二、初の写真集。まなざしからその思考を辿る。 - カーサ ブルータス
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