フランス文化省は23日、同国西部アンジェの中世建築サンモーリス大聖堂の貴重な多色彫刻を保護する計画に、建築家隈研吾さんの案が選ばれたと発表した。かつて正面入り口の外側にあった「ギャラリー」と呼ばれる部分を現代建築で再建する。

文化省によると、フランスで中世の大聖堂に現代のギャラリーを組み合わせる試みは初めて。隈さんは「教会の建築様式とその時代の技術を研究してデザインした。中世と現代の職人が共同して新たにつくり上げる気持ちでプロジェクトに臨みたい」とコメントした。

同大聖堂の入り口を飾るキリストや天使の彫刻は、中世大聖堂の多色彫刻の貴重な一例。アーケードのように柱や屋根で構成されるギャラリーが13世紀に建設されたが、19世紀初めに取り壊された。研究の結果、資料が不十分で完全な復元はできないとして、現代建築での再建が決まった。

アンジェの市長や司教、文化省の専門家らによる最終選考には、ほかにフランスの建築家4人の案が残っていた。隈さんの案は「歴史的建物や周りの都市空間と調和する」と評価された。

バシュロ文化相は声明で隈さんに祝意を表し「現代の創作と歴史遺産の対話が生み出す豊かさを示す」と指摘した。

フランスでは、昨年4月のパリ・ノートルダム大聖堂の大火災で焼け落ちた尖塔(せんとう)の修復に関し、マクロン大統領が国際コンペを実施する考えを示したが、多くの専門家は復元を主張。マクロン氏は今年7月、考えを撤回し、復元に同意した。(共同)