建築家の本間大吉さんは、妻と4歳の長男の3人家族。8年前、当時築14年の今のマンションを自宅兼オフィスとして購入しました。
「中古なのでもちろんリノベーションする考えはありましたが、家の環境や住み心地を実感してからにしようと、まずはそのまま住み始めました」と本間さん。既存は、典型的な3LDK。住んでみて分かったメリットやデメリット、さまざまな気づきを生かしてリノベーションしました。
「しばらく住んでからリノベ」して正解。建築家の自宅兼SOHOキッチンは箱型に。手元を隠して生活感をセーブ
「住んでみて悩みのタネだったのは、北側の部屋への風通しの悪さ。できるだけ間取りを変えずコストを抑えることをコンセプトに、3年前にリノベーションを計画しました」(本間さん)。「工事期間中は仮住まいになりましたが、何年か住んでみて、長所も短所もよく分かってからリノベできてよかったです」(妻)。
閉鎖的だったキッチンはオープンにし、ワンルームのLDを眺められるレイアウトに。生活感を抑えたグレーの箱型キッチンは、ダイニングテーブルとの連携もよく、家族のだんらんや友人とのひとときを楽しめます。
キッチンメーカー・ヤジマのシステムキッチンを採用し、側面から対面側にかけては大工工事、塗装はDIYで行いました。ヤジマのシステムキッチンを採用した理由は、シンプルなデザインでリーズナブル、しかも扉のメラミン化粧板は建材メーカーの色見本から自由に選択できる点が魅力だったから。
「メラミンも塗装色と同じグレーを選び、大工工事でつくった対面側もグレーで塗装。各機能をすべてグレーで囲み、白い箱の中に入れ子のように配置する、という考え方です」(本間さん)。
天板は人造大理石、カウンターの立ち上げ部分は不燃メラミン材で、色を合わせました。「私の注文は、加熱機器はガス、収納は隠す収納を徹底すること。夫の好きなテイストを知っているので、あとはおまかせでした」(妻)
キッチン背面の収納部は、本体と棚を大工工事、扉を建具工事で製作。家具工事業者は入れず、コストを抑えました。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
30~40代夫婦+子供1人
▼家を建てた理由
いつかリノベーションするつもりで、8年前に当時築14年だったマンションを購入。既存のまま何年か住んでみて、問題点を明確にしたうえで、できるだけ間取りを変えずコストを抑えることをコンセプトに、リノベーションを実行。
▼住宅の面積やコスト
66.32㎡(3LDK)、工事費約600万円(税込・設計料別)
水回りをグレーで統一。機能部のテーマカラーとして表現
キッチンの向きを変え、和室を撤去し洋室と一体化させて広いLDKに。さらに、本間さんは壁に付いていた水回り設備を壁から離し、大きな「箱」状にしてコンパクトに集約。壁との間には、もう1つの通路を新設しました。
特に悩ましかった寝室への通風を確保したことで、寝室まで一直線につながり、光と風が届くように。「箱」には夫妻で選んだポーターズペイントのグレーの塗料をDIYで塗装しました。
「箱」の中の水回りは設備を一新。洗面化粧台は普段の手入れとコストを考えてメーカー品とし、バスルームもごく標準的なユニットバスを選びました。
洗濯機上のスペースにはオープンな可動棚を設置。棚の下にはハンガーパイプを取り付けました。
トイレは形状がシンプルなタンクレスを希望したところ、残念ながら建物の水圧が足りず、一見タンクレス風のタンク付きを選択。
トイレ内に手洗器を設置。ボウルが浅めで手入れがしやすいそう。
妻の提案で、バルコニー側のサッシ手前にハンガーが掛けられる垂れ壁をつくり、室内干しの定位置としました。日当たりがいいので衣類がよく乾き、さらにカーテンレールも視界に入らずスマート!
通路に引き戸をつけて通風の調整を自在に
南側に抜ける寝室は、通路の中ほどにつけた引き戸で通風の調節が自在。また通路は一部納戸仕様とし、あまり表に出したくないものを収めるのに活用。ベッド脇の白いドアはフラットな仕上げで、閉めれば広い壁に早変わり。
寝室とつながるウォークインクロゼット。こちらも引き戸を閉めれば壁のように見えます。
玄関土間を広げてワークスペースと一体に
本間さんのワークスペース。通路に設けた半透明の引き戸がLDKの気配を届けます。
玄関土間を西側に広げてワークスペースと一体化。「複数の来客をドアの前で待たせずに済むようになりました」(本間さん)。打ち合わせにも活躍するテーブルは、キッチンと同じメラミン化粧板を活用。
土間の東側に玄関収納を造作。閉めればスッキリと壁状に。
壁を一部撤去し、ドアを引き戸に変更したことで、ワークスペースの採光が改善。グレーの塗装(トイレを除く)は、すべてDIYで仕上げました。ムラ感のある仕上げがいい味を出しています。
白とグレーでまとめられた空間はシンプルなだけでなく、フラットな面を生かすことで広さの演出効果も。「わが家は66㎡ですが、友人たちはもっと広く感じられるね、と言ってくれるのがうれしいですね」(本間さん)。
間取り(リノベーション前後)
設計/本間大吉設計事務所
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラス vol.35」掲載時のものです。
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June 16, 2020 at 03:51PM
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