「ポンピドゥー・センター・メッス」の設計から「紙の大聖堂」「避難所用間仕切りシステム」まで、多方面にわたる活動で知られる建築家の坂茂。
その仕事を包括的に紹介する個展「坂茂建築展―仮設住宅から美術館まで」が、坂が設計を手がけた大分県立美術館で開催される。会期は4月24日~6月21日(予定)。
坂は1957年東京生まれ、82年から磯崎新アトリエに勤務。84年にクーパー・ユニオン建築学部を卒業後、85年に坂茂建築設計を設立。95年にはNGO「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)」を設立し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタントを務めた(99年まで)。
代表作は、中国の伝統的な竹編み帽子から着想を得た屋根の構造を持つ「ポンピドゥー・センター・メッス」(2010)や、パリ郊外セガン島の音楽ホールを中心とした複合音楽施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」(2017)など。
これらの設計や新たな建築資材・手法の開発に加え、災害支援活動も行ってきた坂。1995年の阪神淡路大震災では紙管を用いた仮設住宅「紙のログハウス」や「紙の教会」を制作したほか、2011年の東日本大震災では、紙パイプと布を使って避難所におけるプライバシーを確保する「避難所用間仕切りシステム」が活用された。こうした活動が高く評価され、14年に建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を受賞している。
本展では、難民や被災者のための支援プロジェクトにフォーカスするほか、35年にわたる坂の設計活動を写真や図面、映像に加え、多数の実物大モックアップで紹介。モックアップとは一般的な卓上サイズの「模型」より大きくリアルにつくられたもので、建築の細部や素材を詳細に見ることができる。
多角的な坂の創作や活動が一堂に会する本展。大分県立美術館の建物の特性を活用し、坂が設計にあたってコンセプトの柱に置いた「街に開かれた縁側としての美術館」を体感できる空間構成にも注目したい。
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